私にとってアナログディスク再生とは(その6)
ステレオサウンド 65号の新製品の紹介記事に、リンのLP12 Basik Systemが登場している。
傅さんが記事を書かれている。
LP12 Basik Systemは新型のトーンアームと、
LP12本体のグレードアップキット「ヴァルハラ」と「ニルバナ」を搭載したシステムのことだ。
ニルバナは、シリアルナンバー31825以前のLP12のサスペンションを新型にするもの、
ヴァルハラはシンクロナスモーターをより正確にスムーズに動かすための、一種の電源回路である。
ヴァルハラは正弦波をつくり出す発振器とモーターを駆動するだけの電力まで増幅するアンプ部からなるもので、
LP12以前にも、トーレンスのTD125にも同じものが搭載されていた。
当時のオーディオ雑誌では、TD125にはサーボ回路が搭載されている、という記述があったが、
TD125のターンテーブルは速度検出を行なっておらず、それをフィードバックしていたわけではない。
おそらく詳細な技術資料がなかったことと、
シンクロスモーターでありながら50Hz/60Hzの電源周波数の切換えの必要がなかったこと、
それに通常、電子回路は必要としないモーターなのに、モーターのための電子回路基板があったことなどから、
サーボがかけられている、と思われていたのだろう。
このTD125をベースにしたのがEMTの928で、928もシンクロナスモーターを電子回路によって制御している。
この技術がLP12にも搭載されたのが1982年であり、
ヴァルハラありとなしのLP12の音の差は、想像以上に大きかった。
傅さんの文章を引用してみる。
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結果は歴然。ローエンドへ1オクターブとはいわぬが、半オクターブは伸びて、しかも従来のLP12は認めていても、文句を言えば低域の解像力、エッジの利きがいまいちだったのがキリッと構築される。
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ステレオサウンド 65号は12月発売の号だったから、
「これはLP12のオーナーに朗報であり、良きクリスマスプレゼントである」と傅さんはまとめられている。