管球王国の休刊(その5)
管球王国の休刊についてあれこれ思っていて思い出すのは、
Vol.98掲載記事の「魅惑の音像定位──最新・同軸スピーカーの真価」である。
この記事については、別項「二つの記事にみるオーディオ評論家の変遷」でも書いている。
「魅惑の音像定位──最新・同軸スピーカーの真価」の筆者は、傅 信幸氏。
傅 信幸氏はステレオサウンド 94号、150ページに、こう書かれている。
《よくコアキシャルは定位がいいとはいうが、それは設計図から想像したまぼろしだとぼくは思う。》
同軸型ユニットの特徴である音像定位のよさをまぼろしと思うのは、
人それぞれなのだから、傅 信幸氏と同じ意見の人もいることだろう。
同軸型ユニットにもいいモノがあればそうでないモノもあるし、
別項で触れているように同軸型ユニットの定位のよさは近距離の試聴で活きるものだ。
このことについて書いていると脱線してしまうので、これくらいにしておくが、
私が管球王国の編集者だったら、傅 信幸氏に94号のことについて訊く。
これをやるかやらないかで、「魅惑の音像定位──最新・同軸スピーカーの真価」の面白さは大きく変る。
ステレオサウンド 94号から管球王国 Vol.98までは三十年ある。
この間に傅 信幸氏にどんな変化があったのか、なかったのか。
そういったことを含めて担当編集者が記事を作っていれば──、と残念に思うわけだが、
結局のところ、掲載された記事にとどまっている。
「魅惑の音像定位──最新・同軸スピーカーの真価」は、一例であるが、一例にとどまっているわけではない。