老いとオーディオ(とステレオサウンド・その20)
別項で書いているように、レコード芸術の名曲名盤の企画は、
1980年代はかなり真剣に読んでいた。
一冊にまとめられたムックも買っては、チェックするだけでなく、
個人的に気に入っているアルバムを書きこんでたりもしていた。
そのムックもすぐにボロボロになり、すでに手元にはない。
レコード芸術の名曲名盤は、その後も続いていて名物企画ともいえるわけだが、
いつのころからか読み応えの感じられない内容に成り下がってしまっていた。
どうしてそうなったのか、その理由はおおよそのところわかる。
編集経験があるならば、
ステレオサウンドでのベストバイの変化を間近で見ているだけに、
同じところにその根っこはあるといえよう。
ステレオサウンドのベストバイとレコード芸術の名曲名盤は、
似ているといえばそうなのだが、
オーディオ機器とレコードという違いがある。
オーディオ機器は製造中止になるモデルがけっこうある。
ロングセラーのモデルのほうが少ない。
ところがレコード(録音物)となると、
最新録音のレコードだけでなく、二十年前、さらにもっと前の年代の録音まで、
新品で手に入れることができるという違いがある。
オーディオ機器の現行製品の数は、多少は前後しても増え続けていくことはない。
レコードは増え続けていくといっていい。
特に名曲といわれる作品に関しては、1980年代といまとでは、
そうとうに数の違いがある。
だからこそ、レコード芸術の4月号の特集「その輝きは色褪ない──神盤再聴」は、
名曲廃盤の前にやっておくべき企画だと考える。
どういうことかといえば、「神盤」として取り上げたレコードは、
名曲名盤では取り上げないということだ。
つまりレコードの殿堂入りだ。