Heartbeat Drummers of Japan(その3)
ステレオサウンド 64号のパワーアンプの総テストで、
50万円未満のパワーアンプ26機種と50万円以上100万円未満56機種を、
井上先生は試聴されている。
それぞれの試聴記のすべてで“Heartbeat Drummers of Japan”について、
どういうふうに鳴ったのかを触れられているわけではないが、
ここのところに注目して読めば、なかなか興味深かったりする。
例えばQUADの405-2では、
《小型ながら基本は抑えてあり、太鼓連打でも、小出力ながら予想以上の音が聴かれた》、
ナカミチのPA50は、
《太鼓の連打での立ち上がりの甘さは、電源部に起因するもののようで、問題がクリアーされれば、中域以上の質が高いだけに、かなり優れたアンプになりそうな印象が強い》、
マランツのMA7は、
《太鼓連打でチェックすると電源は水準のレベルにあるが、スケールが小さく、力感がない》、
テクニクスのSE-A100は、
《太鼓連打では、電源の安定度、応答性が高く、不安は皆無で正確に作られたアンプという印象が強い》、
マッキントッシュのMC7270は、
《太鼓の連打では,予想よりも軟調な表現となり、瞬発力よりはジワッとした力感であるのが判る》、
新藤ラボのF2aは、
《太鼓の連打でも左右の太鼓の違いを明瞭に聴かせ、低域の安定度、質感はかなりのものだ》、
ヤマハのMX10000は、
《太鼓連打での反応は、電源部の強力さが感じられ、並の250Wクラスとは異なった力強さが聴き取れるが、なせかアタックの瞬発力は標準プラス程度に留まった》、
こんな感じである。
製品の規模としてはMX10000がもっとも物量投入されている機種で、
価格的にも405-2の約四倍ほどである。
F2aは型番が示すように真空管アンプであり、出力は40WとMX10000(250W)の六分の一ほど。
“Heartbeat Drummers of Japan”の太鼓の連打がうまく鳴ったからといって、
すべての点において音質的に優れたパワーアンプということではないが、
それでもここで挙げた機種の価格、規模を思い浮べながら比較してみることの面白さを感じてほしい。