オーディオ機器を選ぶということ(再会という選択・その9)
再会したいスピーカーといえば、やはりロジャースのPM510である。
PM510はII型も出ているけれど、これを改良モデルとは私はいいたくない。
PM510の音を高く評価していない人は、II型の音を改良された、と評価していた。
けれど、PM510の美点が、ほぼきれいさっぱり洗い流されてしまったかのように、
当時PM510を鳴らしていた私の耳には感じられた。
つまらないスピーカーになってしまった……、
これが私の正直な感想だった。
けれど世評は必ずしもそうではないことも、わかっていた。
瀬川先生が長生きされていたら、PM510の日本での評価も変ってきた──、
とは、だから思えない。
きっと瀬川先生も、II型の音は評価されなかったはず、と思っている。
ステレオサウンド 56号のPM510の記事を何度も読み返したことがある人ならば、
きっとそう思うであろう。
優婉な音。PM510の音は、まさにそうだった。
こんな低音では、ジャズのベースは聴けない──、
そういっていた人がいた。
そうだろうな、とは思っていたけれど、それがどうした! とも思っていた。
この人もII型の音のほうを高く評価していた。
PM510の中古は、一度だけ見たことがあるだけ。
それほど売れたスピーカーではないのだから、中古も出回らないだろう。
私が見たことがあるPM510の中古は、かなりくたびれていた。
PM510は長年使っていると、
ポリプロピレンコーンとエッジとの接着が剥れてしまうことがあるらしい。
ロジャースは、チャートウェルを買収して、LS5/8を出し、
そのコンシューマー版のPM510を出してきた。
ポリプロピレンコーンはチャートウェルが特許を取得していた。
その特許の内容は、どうも接着に関すること、と以前きいたことがある。
確認したわけではないので、はっきりとしたことはいえないが、
確かにポリプロピレンの接着は、当時は困難なことだった、らしい。
なので接着が剥れてしまうのも、しかたないのかもしれない。