Date: 5月 1st, 2022
Cate: High Resolution
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MQAのこと、オーディオのこと(その11)

別項「陰翳なき音色」で、
マルティン・フレストのクラリネットについて少しだけ触れている。

TIDALで、MQA Studioで聴いたマルティン・フレストの“Night Passages”は、
MQAの特長を伝えてくれる録音だといえる。

こう書いてしまうと、人の声ばかりなのだろう、と誤解されてしまいがちなのだが、
MQAで聴く人の声は、ほんとうにいい。
だからといって、人の声ばかりがよく再現されるということではなく、
特に人の声は素晴らしい。

同じことをフレストのクラリネットを聴いていて感じていた。
思うに、どちらも人の息づかいだからなのだろうか。

人の息は決して乾いているわけではない。
ハスキーヴォイスといわれる声であっても、そこには湿り気がある。
湿り気があるだけではなく、人には体温があるように、
その息づかいにも温もりがある。

息づかいのそういうところをMQAは聴き手に強く感じさせる。
そこで思い出すのが、ドイツの民俗音楽学者、マリウス・シュナイダーのことばだ。
     *
息、すなわち生命の力を、
身体の奥底から流れ出る音の捧げものとして、
みずからの意志で、すすんで放つ人は、
自分の人生を歌っているのだ。
なぜなら歌うことは、人生を肯定し、
みずから開放するものだからであり、
人に、そしてその仲間たちに、
幸福と繁栄をもたらすものだからだ。
(音楽之友社刊「音楽という魔法」より)
     *
MQAがもたすら恩恵とは、ここにつながっていくように感じている。

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