Date: 4月 9th, 2022
Cate: TANNOY
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タンノイはいぶし銀か(その13)

セルゲイ・ラフマニノフが演奏家(ピアニスト)として、
高い評価を得ていたヴィルトゥオーゾなのは、
クラシックに興味を持ち始めたころに知っていた。

けれどラフマニノフの曲にさほど関心のない私は、
ピアニスト・ラフマニノフの演奏にもさほど関心をもつことはなかった。

なので聴いたのは、つい先日が初めてだった。
TIDALにラフマニノフによるショパンがあるのは、以前から知っていた。
昨年秋からMQA Studioで聴けるようになっていたのも、もちろん気づいていた。

それでも積極的に聴きたいとは思わず、聴かずじまいだった。
当然古い録音なのだが、聴いてみると、聴きづらいと感じるほどではない。
むしろ、この時代の録音にしてはうまく録れている、とも感じたのは、MQAだったからなのか。

私にとってラフマニノフは、作曲家よりも演奏家としてのほうが関心がある。
どんなふうに評価されていたのかも知りたくなった。

ロンドンでラフマニノフの実演に幾度か接している野村光一氏の文章があった。
     *
ラフマニノフの音はまことに重厚であって、あのようなごつい音を持っているピアニストを私はかつて聴いたことがありません。重たくて、光沢があって、力強くて、鐘がなるみたいに、燻銀がかったような音で、それが鳴り響くのです。まったく理想的に男性的な音でした。それにもかかわらず、音楽はロマンティックな情緒に富んでいましたから、彼が自作を弾いているところは、イタリアのベルカントな歌手が纏綿たるカンタービレの旋律を歌っているような情調になりました。そのうえにあの剛直な和音が加わるのだから、旋律感、和声感ともにこれほど充実したものはないのです。
(「ピアノとピアニスト 2003」より)
     *
《燻銀がかったような音》とある。

野村光一氏は実演を聴いての《燻銀がかったような音》という感想なのだが、
MQA Studioで聴くラフマニノフの音も《燻銀がかったような音》である。

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