瀬川冬樹氏のこと(バッハ 無伴奏チェロ組曲・その9)
瀬川先生にとっての「心に近い音」について考えていて、
ふと思い出したスピーカーシステムがある。
ステレオサウンド 54号に登場したグルンディッヒのProfessional 2500である。
54号の特集では、瀬川先生のほかに、菅野先生、黒田先生が試聴メンバーであった。
Professional 2500の、瀬川先生の評価と菅野先生の評価がどう違うのか、は、
リンク先をお読みいただきたい。
このふたりの評価は違いについては、特集の座談会の中でもとりあげられている。
54号での試聴メンバーは三人であっても、合同試聴ではなく、ひとりでの試聴である。
ゆえに菅野先生のときのProfessional 2500の音と、
瀬川先生が鳴らされたときのProfessional 2500の音が、
違っている可能性もあるわけだが、それについては座談会のなかで、
編集部の発言として、
「このスピーカに関しては、三人の方が鳴らされた音に、それほど大きな違いはなかったように思うのです」とある。
だから評価のズレが、鳴っていた音の違いによるものではない、といってもいいだろうし、
Professional 2500が、瀬川先生にとって「心に近い音」のスピーカーシステムだった──、
そんな気がしてならない。
REPLY))
スピーカーとお二人の評論の立ち位置の違いがくっきりとする絶妙な論を引用なさるワザに感服! シルビア・シャシュもあの頃良くレフェレンスに使われていたのが思い出されました。
瀬川さんの文庫本は、友人に3万円ぐらいで、マランツに則ってプリとメインを作って貰い、クライスラーのパーフェクトで音楽を聴き始めた人間にとって貴重な指南書でした。その後助手になって給料を貰い今でも現役のスペンドールにしたのでしたが、菅野さんなら多分ハーベスHLの方を高く評価されたような気がしています。