サイズ考(その73)
抵抗器は、その種類によって温度係数が違うだけでなく、
同じ種類の、同じメーカーの抵抗器であっても、
W(ワット)数によっても温度係数は違ってくる。
同じメーカーの同じ品種(シリーズ)の抵抗であれば、
W数の大きい方が温度係数は優れている。
この温度係数は、温度変化による抵抗値の変化の具合をあらわす。
温度係数悪い抵抗は、温度変化による抵抗値の変化幅が大きく、
温度係数が優れている抵抗は、温度変化に変化による変化幅が小さい。
もちろん理想は、温度変化に関係なく、常に抵抗値が一定である、ということ。
けれど、そんな理想の抵抗は、世の中には存在しない。
多かれ少なかれ、温度係数が、すべての抵抗に存在する。
とはいっても温度変化による抵抗値の変化は、わずかといえばわずかである。
しかも温度が一定ならば、変化しないわけなのだから、
何が問題なのか? と思われる人もいよう。
アンプ内部に使われている抵抗のほとんどは、音楽信号が通る。
音楽信号はつねに変動している。
その変動する信号が抵抗を通過することによって、
抵抗内部の温度が、わずかながら変化する。
この変化が、音質に影響するのではないか──、という推測である。
レベルの小さな信号が流れているときと、
大きな信号が、それも連続して流れる時とでは、
抵抗内部の温度が変化することは用意に考えられることだ。
けれど、その変化幅はごくわずかのはずだ。
そのごくわずかな変化幅が、どれだけに音に影響するのか。
ほんとうのところは、誰にもはっきりと測定し証明することは、
そうとうに難しいことだろう。
それでも抵抗のW数の大きいモノを使っていくことで得られる音の変化は、
温度係数と深く関係しているのではないか。
そういったことを富田嘉和氏がラジオ技術に発表されていた、と記憶している。
それに、世の中で音がよいと評判の抵抗は、温度係数の優れたモノが多い。