中点(消失点・その2)
たとえば、こんなことを想像してみる。
ラジカセぐらいの大きさのモノで、
これ一台で、素晴らしい音を鳴らしてくれる。
サイズはラジカセ程度なのに、音の左右への広がりは大きく、
奥行きも見事に再現する。
すべての音をあますところなく、本来あるべき姿で鳴らす。
しかも、このキカイの優れているところは、どんな使い方をしようと、
常に最高の音を鳴らすことちだ。
高価なラックの上に置くことはないし、
ラジカセのように完全な一体型だから、ケーブルも必要としない。
高価なアクセサリーを何ひとつ必要としない。
電源に関しても、高性能なバッテリー搭載で、
AC電源の質に頭を悩ますこともまったくない。
そんな理想のオーディオ機器があったとしよう。
その一方で、現在のカタチのオーディオ機器がある。
プレーヤーがあって、アンプがあって、スピーカーが必要となる。
しかもケーブルも必要で、ほとんどの機種がAC電源を必要とする。
置き方ひとつで、音が変化する。
ケーブルを変えれば、音は変る。
アクセサリーをもってくれば、そのことでも音は変る。
変らないところがないくらいに、どんなこまかなことでも音は変っていく。
音楽を聴くキカイとしては、不完全といえよう。
ラジカセ程度の大きさで、理想のオーディオ機器と、
いまわれわれが使っている、いわば不完全なオーディオ機器で音楽を聴いて、
前者の、理想のオーディオ機器では視えてこない(聴こえてこない)ことがあるはずだ。
前者が聴かせるのは、モノゴトの結果だけであるからだ。