ARTURO TOSCANINI -PHILHARMONIA ORCHESTRA- BRAHMS(その1)
福永陽一郎氏の「私のレコード棚から──世界の指揮者たち」(音楽之友社)。
トスカニーニを、これほど貶した文章は、他で読んだことがない。
福永陽一郎氏は、トスカニーニ/NBC交響楽団の録音をまったくといっていいくらいに、
全否定されていたけれど、
トスカニーニとフィルハーモニアによるブラームスの録音だけは、絶賛されていた。
1980年代のレコード芸術の特集、名曲・名盤でも、
福永陽一郎氏はブラームスの交響曲のところで、
トスカニーニ/フィルハーモニア盤を、高く評価されていた。
どちらも手元にないので正確な引用ではないが、
トスカニーニに関しては、フィルハーモニアとのブラームスだけを聴いていればいい──、
そんな感じのことを書かれていたはずだ。
ここまで書かれていると、興味がわく。
そのころアナログディスクで、トスカニーニ/フィルハーモニアのブラームスは出ていた。
買って聴いた。
演奏の前に、音が貧相だったのが気になった。
福永陽一郎氏のように断言できるほど、当時はトスカニーニの演奏を聴いていたわけではなかった。
でもトスカニーニが残した録音のなかでも、フィルハーモニアとのブラームスは、たしかにいい。
あとすこしだけ音が良好であったならば……、そう感じてもいた。
当時、トスカニーニはRCA専属だったため、
フィルハーモニアとの演奏の録音は発売できずに、
プロデューサーのウォルター・レッグがマスターテープを所有したままだった。
それでもなんらかのコピーがレコードとして発売になっていた。
2000年に、イギリスのテスタメントが、
ようやくレッグ所有のマスターテープを元にCD復刻をした。
2020年、フィルハーモニア創立75周年のCDボックスが、ワーナーから発売になった。
トスカニーニのブラームスも含まれていた。
このボックスでも、テスタメントによるマスタリングが使われている。
気にはなっていたが、どちらも買わないままだった。
さきほどTIDALで検索してみた。
あった。
トスカニーニ/フィルハーモニアによるブラームスが、MQA(44.1kHz)であった。
TIDALを使うようになってすぐに検索したときは、なかった(私の見落しかもしれないが)。
それが、いまはある。