MQAのこと、TIDALのこと(その8)
1982年にCDが登場し、録音もデジタル方式に大半が移行していても、
海外から日本のレコード会社にマスターテープのコピーが送られてくることにかわりはなかった。
変ったのは、マスターがデジタルになったことぐらいだろう。
インターネットが普及し始めたころでも、それはかわらなかったはずだ。
かわってきたのは、常時接続が当り前になり、
高速回線が普及してからだろう。
さまざまな業界でデジタル化がすすみ、データの受け渡しは、
以前は光磁気ディスクやCD-Rなどにコピーして、
それらを相手先に届けるのはアルバイトだったり、
バイク便を使ってだったりだった。
いまではインターネットを介してのデータの受け渡しが当り前である。
原稿にしてもそうだし、もっとデータ量の大きなファイルであっても、
以前ならば何かにコピーして渡していたのが、
簡単に短時間で相手先に届くのが、いまのインターネットである。
そういう時代に、レコード会社がマスターテープのコピーを、
日本のレコード会社に送るだろうか。
コピーをつくるのにも時間とお金がかかる。
それを日本に送るのにもお金と、けっこうな時間がかかる。
いまでは、元のデータのコピーをつくることなく、クリックだけでわずかな手間と時間で送れる。
そんな時代なのだから、日本でMQA-CD、SACDを製造するにあたって、
マスターテープのコピーが、モノとして送られてくることはないと考えた方がいい。
元となるマスターが、インターネットを介して日本のレコード会社に送られてくる。
海外と日本のレコード会社間の光ファイバー回線が、
オーディオ用の特殊な回線であるなんてことは、もちろんない。
その経路は、TIDALのストリーミングで聴く際とほぼ同じはずである。
少し考えれば、すぐにわかることである。
ストリーミングやファイルのダウンロード、
つまりインターネットを介しての音楽データは信用できない、と主張している人は、
このことをどう捉えるのだろうか。
もしかすると、だから輸入盤しか買わない、というかもしれない。
いいそうである。