plain sounding, high thinking(その14)
GRFメモリー以降の、タンノイのPrestigeシリーズに、
私がスター性を身につけようとしていると感じてしまうのは、
タンノイはPrestigeシリーズにおいて、
《クラシカルなものに淫している》ように思えてしまうからだ。
1993年ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」の中で、田中一光氏が語られている。
《伝統のあるオーディオメーカーって止まってしまっているところが多いでしょう。クラシカルなものに淫しているように思う。》
田中一光氏は、どのブランドのことなのかは発言されていない。
発言されたのかもしれない。
編集部がまとめた段階で、その部分は削られたのかもしれない。
どちらなのかはわからないが、
それでも《クラシカルなものに淫している》《伝統あるオーディオメーカー》は、
タンノイのことだと確信している。
JBLの4343の成功、
そして4343がまとっていたスター性と、
タンノイのPrestigeシリーズが身につけようとしているスター性は、
ここのところでずいぶん違っているように感じてしまう。
(その1)は、約五年前に書いている。
“plain sounding, high thinking”は、
ワーズワースの有名な詩句 “plain living, high thinking” をもとに思いついた。
そして、タンノイのコーネッタのことも思い浮べての(その1)だった。
(その1)からの四年半後、タンノイのコーネッタを手に入れた。
自分でタンノイを鳴らしてまだ一年も経っていない。
それでもあれこれおもうことは、いくつもある。
別項で書いているいぶし銀という表現に関してもそうなのだが、
音色的な意味でのいぶし銀とは違う意味で、
“plain sounding, high thinking”こそ、私にとっての「いぶし銀」な音である。