スピーカー技術の100年III ステレオ時代と日本製システムの変遷(その2)
誤植のまったくない本というのは、いったいどれだけあるのだろうか。
「スピーカー技術の100年III ステレオ時代と日本製システムの変遷」も、いくつかある。
すぐに誤植と、誰にでもわかる程度であれば、ここで取り上げたりはしない。
けれど、59ページ掲載の写真11-26は、見逃せない。
そこには《前面ネットを外して撮影したミニスピーカーシステムの外観(1964年)》とある。
本文中(57ページ)にも、1964年に撮影された、とある。
けれど、この写真に写っているのは、
ブラウンのL100、ダイヤトーンのDS5B、ロジャースのLS3/5A、グッドマンのMaxim、
パイオニアのCS-X3の五機種である。
LS3/5Aが日本に輸入されたのは1976年、
L100、DS5B、CS-X3は1977年に登場した機種である。
Maximだけが、この中では古い機種である。
写真は1977年に撮影されたもののはずだ。
この時代のオーディオを知る人ならば、すぐに間違いだと気づく。
問題なのは、ずっと後の世代に人たちは、この間違いに気づきにくいことだ。
資料的価値の高い本に、そう書いてあると、
その時代のことを知らない人は、そうなのか、と素直に信じてしまう。
そうなると、誰かが、違うよ、と指摘したところで、
あの本にそう書いてあったのだから、となかなか信じてもらえないことだって、十分考えられる。
不真面目な本であれば、あえて書かない。
でも「スピーカーの技術100年」は、より信頼ある本になってほしい。
そのためにも正誤表をきちんとつくり公開してほしい。