Date: 9月 27th, 2020
Cate: TANNOY
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タンノイはいぶし銀か(その9)

いぶし銀とは、硫黄をいぶして、表面の光沢を消した銀のことである。
それで比喩的に、渋くて、味わいのあるものとして使われる。

どんなに辞書をひいたところで、いぶし銀の音といわれて、
それがいったいどういう音なのか、はっきりとつかめるわけではない。

ならばGoogleで「いぶし銀」を画像検索すれば、
いくつもの写真が表示される。

私はいぶした銀そのものを見たことがない。
それらの写真を見て、やっぱりこういものなのか、と思った。
けれど、これがタンノイの音の印象なのかというと、少なくとも私の場合は違う。

いぶし銀は常套句といえるのか。
一時期は、タンノイの音に対しての常套句といえた。
いまはどうだろうか。

昔ほどには、そうとはいえないのではないだろうか。
どちらにしても、常套句はわかりやすいといえば、そうともいえるけれど、
いぶし銀という表現を見た人すべてが同じ音を思い浮べているという保証はどこにもない。

百人の人がいれば、百通りのいぶし銀の音をイメージしていることだろう。
私がいぶし銀でイメージする音と、Aさんがイメージする音、Bさんがイメージする音……、
それぞれの人の頭をのぞいて、イメージした音を聴ければ、
近い人、まったく正反対の音をそう思っているだけの人、さまざまだろう。

わかりやすい。
それだけは事実であっても、
わかりやすさは善ではない──、ということは以前別項で書いている。

いぶし銀に関しては、ほんとうの意味でわかりやすい表現ではない。
むしろ書き手側にラクをさせているだけの常套句になりさがっているのではないだろうか。

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