リモート試聴の可能性(その7)
ユニバーサルミュージックから「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」が発売されている。
SACDとLPだけでなく、e-onkyoでの配信も始まっている。
配信はDSF(11.2MHz)とflac、MQA(96kHz、24ビット)がある。
すでにオーディオ関係のサイトで紹介されているので、詳細は省く。
ジャズ喫茶ベイシーの再生音を収録したものである。
今年はベイシー開店50年ということで、映画も公開されている。
その一貫としての、「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」の発売なのはわかっていても、
今年はコロナ禍ということで、オーディオショウがほほすべて中止になっているなかでの発売。
偶然なのだろうが、リモート試聴というテーマで書いている途中での発売は、
おもしろいタイミングでの登場というふうにも感じられる。
この企画は、どんなふうに受け止められるのだろうか。
おもしろい、と思う人もいれば、くだないこと、と思う人もいるはずだ。
再生音を録音して、何がおもしろいのか、という人は、以前からいる。
この人たちのいわんとするところがわからないわけではないが、
こうやって記録として残してくれることは、くだらない、とか、意味がない、とか、
そんなこと以前に、ありがたいことではないだろうか。
そんなことをいうよりも、「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」を、
どう聴くのかを、考えた方がずっと建設的ではないだろうか。
ジャズ喫茶ベイシーのシステムはよく知られている。
その音を収録して再生するのであれば、
やはり同じシステムでなければならないのか。
けれど、同じシステムであっても、同じ環境なわけではないし、
環境を含めて、ほぼ同じことを再現できたとしても、
鳴らす人が違うのだから……、ということになる。
同じにはできないのだから、どんなシステム、環境で聴いてもいい、ともいえる。
それでも伝わってくるところは、きちんとあるはずだ。
けれど、「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」について論じるのであれば、
少なくとも、なんらかのリファレンスといえるものをどうするのか──、
そのことを避けていくわけにはいかないはずだ。