MQAで聴きたいアルゲリッチのショパン(その1)
ショパンの音楽に特徴的な無垢な部分。
かなり以前に、黒田先生が、なにかそんなふうに書かれていたことをおもいだす。
この特徴的な無垢な部分がショパンの音楽にはあるからこそ、
芸達者なショパンの演奏は、どこかつくりものめいたところを感じる──、
そんなふうにも書かれていた。
私は、ショパンの音楽がどうも苦手である。
いまは歳をとったせいもあるからそれほどでもなくなってきているが、
20代のころは、ショパンの音楽を聴いていると、尻のあたりがムズムズして落ち着かない。
30代のころまでそうだった。
40代のころは、ショパンをほとんど聴かなくなっていた。
ショパンが嫌いなわけではない。
ただ聴いていると、そうなるから聴くのを避けていたら、そうなってしまっただけだ。
この尻のあたりのムズムズ感は、
もしかすると、黒田先生が以前指摘されたことは関係しているのかもしれない。
そんなふうに50代になって思うようになった。
芸達者なショパンだったから、そんなふうに落ちつかなくなるのか。
先月、アルゲリッチの“THE LEGENDARY 1965 RECORDING”を聴いた。
録音は1965年。
アルゲリッチがショパン・コンクール優勝の数ヵ月後の録音である。
なのに世に出たのは1999年。
レコード会社との契約の関係で34年間発売されなかったことは、
クラシック好きの人ならば、よく知っていること。
“THE LEGENDARY 1965 RECORDING”が出るといニュースを知った時は、
まだ30代だったこともあって、出るんだぁ、以上の関心がもてなかった。
“THE LEGENDARY 1965 RECORDING”がショパンでなく、
ほかの作曲家の作品の録音だったら、すぐさま買っていただろう。
そんなことで発売から21年経って、はじめて聴いた。