Date: 6月 26th, 2020
Cate: フルレンジユニット
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シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(次なるステップは・その8)

598戦争時代の一本59,800円のスピーカーシステムは、
著しくアンバランスな製品だった。

この価格帯のスピーカーがターゲットとしている購買層が、
とうていきちんと鳴らせるスピーカーではない、と言い切れるほどだった。

ユーザー宅で鳴っている598のスピーカーの音を聴いたことは一度もない。
それでも、そう言い切れるほど、
ステレオサウンドの試聴室で、国内各社の598のスピーカーシステムはすべて聴いている。

同価格のプリメインアンプとCDプレーヤーの組合せ、
それに598のスピーカーを買うであろう若い人の使いこなしの力量で、
低音をうまく響かせることができた人がいるだろうか。

よほど幸運にめぐまれないかぎり、
低音のほんとうの魅力を知ることなくオーディオをやることにつながっていったはずだ。

それに、いまでもいわれていることだが、
スピーカーの高さはトゥイーターを耳の位置に合わせるのが基準になっているが、
実際に音を聴けばすぐにわかることだが、
当時の598のスピーカーシステムのユニット構成、クロスオーバー周波数の設定などからいえるのは、
比較的バランスがよくポイントは、トゥイーターの位置どころか、ずっと低いところにある。

ウーファーとスコーカーの中間あたりに耳をもってくれば、
けっこうバランスはよくなる。

つまり、当時の標準的な高さのスタンドにのせて598のスピーカーを鳴らすのであれば、
聴き手は床に直に座ったくらいでも、場合によっては耳の位置が高いことになる。

椅子に座って聴くから、といって、
それではスタンドにもっと高いモノをもってきてスピーカーをさらに持ちあげる──、
このやりかたは、おすすめしない。

まず当時は、そんな高さのスタンドはほとんどなかったはずだ。
しかも598のスピーカーは物量を投入しすぎて、重量は重く、
しかもフロント側がやたら重いというアンバランスさもあって、
想像以上にしっかりしたスタンドを用意しなければ、アンバランスな音はさらにひどくなる。

このことについては、どこまでも書いていけるけれど、ここではこのへんにしておく。
とにかく598のスピーカーで、豊かな低音を鳴らしていた人は、ほとんどいないと思っている。
ということは、598のスピーカーで聴いていた人たちは、
あの帯域バランスが基準となっていった可能性も考えられる。

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