オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(朝沼予史宏氏のこと)
オーディオ雑誌(ジャーナリズム)に「役目」、それぞれのオーディオ雑誌に「役割」が本来あるべきなのと同じに、
そこに書く人たちにも、当然「役目」、「役割」がある。
ステレオサウンドが幸運だったのは、五味先生を筆頭に、
岡俊雄、井上卓也、岩崎千明、上杉佳郎、菅野沖彦、瀬川冬樹、長島達夫、山中敬三の各氏みな、
「役目」に対する共通認識が、なんらかの形であったこと。
そしてそれぞれの方たちが、それぞれの「役割」を果してこられていたこと。
だから、ステレオサウンドをおこした原田勲氏には、編集者は黒子、という考えがあるのだ、とも思う。
「編集者は黒子」という発言は直接聞いているし、
いつの号だったかは失念してしまったが、菅野先生と原田勲氏との対談の中でも、やはり語られている。
編集者は黒子であるべきなのか、黒子でいいのか、については、
当時は黒子の方が、いい結果を生んだように思う。
なまじ編集者が表に出しゃばったりするよりも、
役目と役割を共通に新規としてもっておられる方たちにまかせたほうがうまくいくように思うし、
事実、うまくいっていた。
もちろん、そこに編集者の役割がなかった、というわけではないし、
編集者は黒子としての役割を果してきたとは思う。
だが、岩崎先生が1977年に、五味先生が1980年に、瀬川先生が1981年に亡くなり、
菅野先生も不在のいま、編集者が黒子でよかった時期は、とうに過ぎ去っている。
いまステレオサウンドに書いている筆者(菅野先生が不在のいま、オーディオ評論家という言葉は使わない)で、
「役目」「役割」をはっきりと認識して、果してきている人がいる、とは思えない。
上にあげた方たちのあとに、「役割」を意識していた人は、朝沼予史宏氏だと思う。