オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(岩崎千明氏のこと)
岩崎先生は、ジャズを聴かれていた。
そのことは文章を読めば伝わってくる。
それはなにも、岩崎先生の文章のなかに、ジャズに関係する固有名詞が登場するからではなくて、
文章そのものが、ジャズでもあったと感じていた。
この点が、クラシックもジャズも聴かれる菅野先生との違いのひとつでもあったと思うし、
だからこそ、ジャズの熱心な聴き手ではない私なのに、岩崎先生の文章を読み終えると、
ジャズが無性に聴きたくなっている。
それは岩崎先生の文章には、ジャズをオーディオで聴く面白さと楽しさがあるからだ。
ステレオサウンドを、オーディオ評論を築き上げてきた人たちは、
岩崎先生を除けばクラシックを主に聴かれる方ばかりだった。
クラシックでもなくジャズでもなく、ロック、ポップスをメインに聴く人は次の世代になってあらわれてきた。
いまのステレオサウンドに執筆している人たちは、
クラシック以外の音楽をメインに聴く人の方が多いようにみえる。
音楽の多様性からみれば当然のことだろう。
だが、岩崎先生のような人がひとりでもいるだろうか、と思う。
つまり文章そのものがジャズであったように、
ロックそのものが伝わってくる文章を書いている人は、いるだろうか(少なくとも私にとっては、いない)。
その文章からロック、ポップスに関する固有名詞を取り去ったあとでも、
ロックを感じさせてくれる文章を書けるオーディオ評論家の登場は、期待できるのだろうか。
それとも、単に私のロックに対するイメージが古すぎるだけなのだろうか。