オーディオ・システムのデザインの中心(その26)
瀬川先生のステレオサウンド 49号の文章には、L07Cのデザインを批判したことに対して、
トリオのある重役から
《デザインのことをああもくそみそに露骨に書かれては、あなたを殴りたいほど口惜しいよ。それほどあのデザインはひどいか、と問いつめられた》
とある。
これは大事なことというか、絶対に見逃せないことである。
問いつめてきたトリオの重役は、L07Cのデザインをひどいとは思っていないことがうかがえる。
L07Cを商品として世に送り出した、ということは、
この重役だけでなく、開発、デザインに携わった人たちだけでなく、
おそらく営業や広報の人たちも、
少なくともL07Cのデザインをひどい、とは思っていないのではないか。
ひどい、と思う人がいたならば、もう少しまともなデザインでL07Cは商品化されたはずだ。
今度のアキュフェーズのE800にしても、同じなのかもしれない。
アキュフェーズだけではなく、一時期のラックスもそうだったのかもしれない。
あのずんぐりむっくりしたアンプのプロポーションを続けていたのだから。
一人でやっている小さなオーディオメーカーだったら、こういうことはありうる。
すべてを一人でやっているわけだから、
そこで独りよがりな面が強く製品に顕れてしまうことはあっても不思議ではない。
でもアキュフェーズもラックスもエソテリックもトリオも、そういう会社ではない。
なのに、ひどいデザインのモノを世に送り出すのは、
つまりは、誰一人として、ひどいデザインだ、とは感じていないからなのだろう。
一人くらいはいたのかもしれない。
でも、その一人が声をあげられない雰囲気、
あげたとしても、誰もふり返られないのであれば同じことだ。