音楽の理解(平均律クラヴィーア曲集、ベートヴェンの後期ソナタ・その3)
味わえば味わうほどに、平均律クラヴィーア曲集はますます美しくなる、
味わえば味わうほどに、ベートヴェンの後期ソナタはますます美しくなる。
味わえば味わうほどに、ということは、くり返しくり返し聴く、ということでしかない。
くり返しくり返し聴くために必要なものは、それこそが美しい音なのかもしれない。
いい音と書こう、とした。
けれど、いい音と書いてしまうと、そうとうに認識が違ってくることがわかっているから、
美しい音とした。
美しい音にしても、単にきれいな音を美しい音と勘違いしている人も少なくないし、
こちらも認識が、人によって大きく異っているのはわかっていても、
それでも美しい音とした。
精度の高い音、精確な音、
そういう音をひたすら目指していく。
そういうことも必要なのはわかっている。
それでも、それだけではどんなにしても到達できない領域があって、
その領域を目指すのか目指さないのか。
表現を変えれば、その領域が視えているのか視えていないのか、である。
そこをどう判断するのか。
結局、聴くしかない。
バッハの平均律クラヴィーア曲集を、
ベートーヴェンの後期のピアノソナタを、
美しくしていくために。
それが、レコード音楽(録音された音楽)を聴く上での、
音楽の理解だと確信している。