Date: 9月 13th, 2019
Cate: アクセサリー
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トーンアームリフターのこと(その1)

黒田先生は、デュアルのプレーヤー1219について書かれている。
     *
 ついでながら書いておくが、今はデュアル一二一九というプレーヤーをつかつている。このプレーヤーの最大の利点は、スイッチをONにしてから、音が出るまで、約二十秒かかること、だ。手動式のプレーヤーだと、針を盤面におろすと、すぐに音が出てきてしまう。当然、あわてて、椅子に腰かけなければならない。しかし二十秒あれば、かなり余裕がある。椅子にすわる前にタタタターンとはじまってしまうと、演奏会の開演におくれそうになって、息せききってかけこんで、暗くなりだした会場で席をさがしたりする時の、あのあわただしさをどうしても感じてしまう。たったの二十秒だが、この二十秒のおかげであわてないですむとなれば、黄金の二十秒である。その間に、椅子の上にすわりこみ、おもむろにスコアのページをひらいて待っていられる。
(「闇の中で光を聴き、光の中で闇を聴くたくましさがほしい」より)

 耳をそばだててきく気持はもともとなかった。だから、ごく無造作にレコードをターンテーブルにのせて、いつものようにプレーヤーのスタートスイッチをいれて、椅子に腰をおろした。つかっているプレーヤーは、デュアルの1219だが、このプレーヤーのいいところは、自分で針を盤面におろさなくとも、スタートにしておけば自動的にかかることだ。いかにもあたりまえのことをよろこんでいると思われそうだが、スタートスイッチをいれてから音がでるまで、ほぼ二〇秒かかる。その二〇秒が、ひどく貴重に思える。二〇秒あれば、そんなにあわてずとも、椅子にかけて出てくる音をまちかまえられる。
 このデュアルの前は、パイオニアのモーターとグレースのアームの組合せできいていた。その頃は、針をおろしてから音が出るまでの時間があまりなくて、なんとなくあわただしい気持になった。しかし、だからデュアルにかえたのではなくて、一度オートチェンジャーというものを使ってみたいというひどく子供っぽい好奇心が、デュアルをえらばせたようだった。四年か五年も前のことになるだろうか。そして、使ってみた結果、そこで可能な黄金の二〇秒に気づいたというのが、正直なところだ。まさにそれは黄金の二〇秒というにふさわしいもので、みじかすぎず、長すぎず、本当にグッドタイミングに音がでてくる。
(「My Funny Equipments, My Late Friends」より)
     *
約一年のあいだに二回書かれているのだから、
かなりデュアルのプレーヤーの「黄金の二十秒」が気に入っておられたのだろう。

瀬川先生は、というと、「黄金の二十秒」ががまんできない、とされていた。
人それぞれである。

私も以前は、瀬川先生と同じだった。
プレーヤーは、坐っているところから手を伸ばせば届く位置に置く。
マニュアルで針を降し、アンプのボリュウムをあげる──、
それがスムーズにできて一人前と考えていた。

プレーヤー付属、トーンアームの付属のアームリフターはまどろっこしい。
なので、アナログディスク、アナログプレーヤー全盛時代にあった、
アクセサリーとして発売されていたリフターにはほとんど興味がなかった。

けれど、ここに来て少し考えが変ってきた、というか、
リフターについて考えるようにもなってきて、ひとつ気づいたことがある。

1 Comment

  1. paunogeirapaunogeira  
    9月 22nd, 2019
    REPLY))

  2. 「蓄音機に至つては、この余白を活用することにおいて、実演よりも遥かに多くの機会を有している。即ち、レコードを裏返へしたり、かけかへたりする間が、余白であつて、この余白から芸術的の効果を挙げ得ないやうでは、真の蓄音機愛好家とは言はれない。」 上司小剣著『蓄音機読本』より

    1F

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