世代とオーディオ(若い世代とバックナンバー・その1)
ぎりぎり20代の人が、ステレオサウンドのバックナンバーを熱心に読む。
悪いことではない。
そう思いながらも、今日、facebookでみかけたことはちょっと気になった。
ステレオサウンド 52号はアンプの特集号だ。
セパレートアンプとプリメインアンプの総テストを、53号と二号にわたって行っている。
若い読み手は、七万円台のプリメインアンプを、
当時の初任給からすれば、中級機ではなく、高級機ではないか、としていた。
価格だけをみれば、そういえないことはない。
けれど視野は広くもってほしい、とつくづく思う。
中級機とか高級機とか、そういった位置づけは、
単に価格によって決るわけではない。
その時代時代に、アンプなら、どういった製品があったのかによって位置づけられるものだからだ。
七万円台のアンプのメーカーは、他にどんなプリメインアンプを出していたのか、
そこに目を向けるだけで、七万円台のプリメインアンプは、
そのメーカーにとって高級機という位置づけではないことはすぐにわかる。
他社製のプリメインアンプも含めて眺めれば、もっとはっきりとしてくることだ。
それでも当時七万円台のプリメインアンプは、大学卒の初任給の大半を注ぎ込まなければ買えない。
高級機ではないか、と、そうとらえることは可能だろうか。
単に当時のプリメインアンプがどういうモノがあったのか、
そういうことを抜きにしても、思いだしてほしいのは、
七万円台のプリメインアンプは、いわゆる単品コンポーネントである。
この時代、各社からシスコン(システムコンポーネント)が出ていた。
シスコンが流行っていた時代でもある。
シスコンの一つ前の段階としてはラジカセもあった。
家庭で音楽を聴く機器として、
ラジカセがあり、シスコンがあった。
つまり単品コンポーネントそのものが、いわば贅沢品である。
このことを忘れてしまっていての位置づけは意味をなさない。
1979年当時、七万円台のプリメインアンプは、
単品コンポーネントという贅沢品のなかでの位置づけは、中級クラスということになる。
若い人が、生れる前のステレオサウンドのバックナンバーを読むことは、
悪いことではない、としたのは、良いことだ、とはいえないことがあるからだ。