世代とオーディオ(OTOTEN 2019・その3)
あのころはみんな若かった。
編集者だけではなく、筆者もそうだった。
私が最初に手にしたステレオサウンド 41号。
1976年12月発売の号だから、
1932年9月生れの、菅野先生、山中先生、長島先生は44歳、
1935年生れの瀬川先生は41歳。
あのころはそんなふうに感じたことはなかった。
けれどステレオサウンドを辞めて、三十年経つと、
みんな若かった、ということの実感が日増しに強くなってくる。
こんなふうに書いていると、若ければいいのか、と言う人があらわれそうである。
(その2)で、若ければいいなんていいたいのではない、と書いても、そう受けとる人がいたりする。
くり返すが、若ければいいわけではないし、歳をくっているからいいわけでもない。
ただただ、あのころはみんな若かった、このことだけを強調したいのと、
結局のところ、オーディオ業界もあのころは若かったといえるし、
あまり新陳代謝が行われなかったのか、
そのままみんなして同じように歳をとってしまった(老いてしまった)。
このことを実感している。
みんな一緒に歳をとってしまったから、気づきにくかったのか。
どうも私より下の世代は、オーディオに関心をもつ人は、急激に減っていったような気がする。
菅野先生からきいた話がある。
確か北海道の、若いオーディオマニアの話だった。
そのころ20代だったはずだ。
彼は、けっこう熱心なオーディオマニアらしい。
彼が行きつけのオーディオ店では、彼がいちばん若い常連客だった。
でも彼は、友人、知人に趣味がオーディオだ、とは言っていない。
バカにされることがわかっているから、らしい。
友人、知人にオーディオマニアだということを告白することは、
カミングアウトするようなもの、らしい。