日本のオーディオ、これから(Made in Japan・その3)
タンノイのウェストミンスターの登場は、1982年。
そのころだと木工職人の人件費は、イギリスよりも日本の法が高い、ということだった。
タンノイは、構造が複雑なエンクロージュアのオートグラフの製造をやめている。
ウェストミンスターは、レクタンギュラー型、コーナー型という違いはあるが、
オートグラフと基本的な構造は同じである。
フロントショートホーンをもち、バックロードホーンでもある。
オートグラフの製造をやめてしまったタンノイが、
ほぼ同じ構造のエンクロージュアのウェストミンスターを製造するということは、
オートグラフの再生産を始めたようなものである。
ティアックによる国産エンクロージュアによるオートグラフもよく出来ていた。
それでも、日本ではオリジナル・エンクロージュア神話(みたいな)がある。
私も、オートグラフを購入するのであれば、イギリス製(オリジナル)エンクロージュアを探す。
そういうものである。
それは、いま以上に、当時のほうが強かったはずだ。
そんななかウェストミンスターが登場したわけだ。
ウェストミンスターの登場は、モノづくりの難しさとともに、
モノづくりを囲む状況の変化といったことも考えさせられる。
この状況は変化している。
私はそれほど、その変化に詳しいわけではないが、
それでも数年ほどではっきりとした変化があるように感じている。
ある時期、中国は世界の工場と呼ばれていた。
けれど、五年ほどくらい前からか、
以前は中国で製造されていたのに、
いつのまにかベトナム、インドネシアに変っていたという例を、
オーディオではないけれど、いくつかのジャンルでいくつも知っている。