Western Electric 300-B(その21)
真空管アンプを自作する、
そこでの塩加減はなんのか。
こじつけなのかもしれないが、ハンダ付けにおけるハンダの量のような気がする。
二十数年前に、知人に頼まれて抵抗とコンデンサーだけの、
いわゆるパッシヴ型のデヴァイダーを作ったことがある。
4ウェイ用で、モノーラル仕様。
シャーシー加工が終り、依頼してきた知人が一台、私が一台を作ることになった。
当然だが、使用部品は同じ。
内部の配線もプリント基板を使わずにラグ端子を使って行った。
配線材は左右チャンネルで同じになるように、線材の長さだけでなく向きも揃えた。
そうやって二台のパッシヴ型のデヴァイダーが出来上った。
ステレオで聴いた後に、スピーカーを一本にしてモノーラルでも聴いてみた。
知人が作ったモノと私が作ったモノとの比較試聴である。
部品が同じだから、基本的には同じ音といえるけれど、
まったく同じ音でもなかった。
ここでの音の違いは、ハンダ付けの違いに起因するとしか思えない。
もちろん同じハンダ(キースター)を使っている。
けれど一箇所あたりのハンダの量は、知人と私とでは違いがあった。
知人のほうが一箇所あたりのハンダ使用量は多かった。
多かったといっても、二倍も違うわけではない。
ハンダの量の違いは、作っている途中で、知人も気付いていた。
ハンダの量は多すぎても少なすぎてもダメであり、
塩加減と同じで、ハンダ付けも一発勝負である。
パッシヴ型のデヴァイダーだから、いくら4ウェイ用とはいえ、
使用部品点数は少ないし、ハンダ付けの箇所も多いわけではない。
真空管アンプに比べれば、ずっと少ない。
それでもハンダ付けでのハンダの量は、
少なからぬ違いとして、音としてあらわれることは事実である。