平成をふり返って(その5)
東芝クレーマー事件の数年前あたりから、
マルチメディアという言葉がよく使われるようになっていた。
CD-ROMが登場してからである。
しばらくしてパーソナルメディアという言葉を、何かで目にした。
アメリカの女性による言葉だった、と記憶している。
マルチメディアにはピンとこなかった私だったが、
パーソナルメディアは、確かにそうかも、と頷けた。
とはいっても、具体的にどういうものがパーソナルメディアなのか、
パーソナルメディアといっても、個人が作れるものなのか、
そんな疑問ももっていた。
そこに東芝クレーマー事件があった。
それまでにも個人サイトはいくつもあった。
それは趣味のことを書いたものであったり、
専門家の個人サイトでは、専門分野のことであったりした。
そこに東芝クレーマー事件の個人サイトが登場した。
東芝クレーマー事件の真相がどうだったのかは、実のところはっきりしないところもある。
それでも東芝クレーマー事件の個人サイトは、
それまで公開されていた個人サイトとは、はっきりと毛色が違っていた。
私にとって、東芝クレーマー事件の個人サイトは、パーソナルメディアの具体例、
それも最初の具体例であった。
東芝クレーマー事件の一年以上前から、
オーディオのウェブサイトをつくろう、と思ってきていた。
ただつくろう、つくりたい、と思っていただけで、
具体的な内容についてはほとんど考えていなかった時期に、
東芝クレーマー事件のサイトの登場であったわけだ。