「新しいオーディオ評論」(その11)
ステレオサウンド 209号が出た。
私が編集長だったら、209号の特集は菅野先生のことにする。
けれど、現実は違うわけで、209号の特集は恒例のグランプリとベストバイである。
毎年暮の恒例の、これらの企画。
今回だけは3月発売の210号にまわしてもいいだろうに……、と思うし、
読者の多くは納得する、とも思う。
そういう決断はできないのか。
できないことはわかっていた。
考えもしなかったのだろう。
だから、特に驚きもなかった。
けれど、編集後記は少しばかり驚いた。
編集者全員、そうだ、と思っていたからだ。
瀬川先生の時、61号の編集後記はそうだった。
編集者全員が、瀬川先生へのおもいを綴っていた。
209号の編集後記は違っていた。
書いている人もいた。けれど全員ではなかった。
これも思い入れなさゆえなのか。
菅野先生は2010年ぐらいから書かれていない。
そのあとに入社してきた編集者は、菅野先生と仕事をする機会はなかったのはわかっている。
それでもステレオサウンド編集部にいるということは、
そこにいたるまでに菅野先生の文章をまったく読んでいない、ということがあるのか。
私には考えられないことだが、あるのかもしれない。
そういう人たちにとって、思い入れはなくても仕方ない。
思い入れ──。
いまのステレオサウンドに期待するのは、もう無理なのか、
すること自体無駄なことになるのか。