聴感上のS/N比と聴感上のfレンジ(アンプの脚・その6)
あのスプリングが、こんなにも音を悪くしているのを知ったのは、
井上先生の試聴のときだった。
井上先生が、スプリングのところに布製の粘着テープを巻いてみろ、といわれた。
やってみると、あきらかに良くなる。
音の見通しがよくなるのである。
布製の粘着テープを貼ることで変ったのは、
この部分の振動(共振)に関することである。
井上先生は、さらに取ってみろ、ともいわれた。
これはちょっとやっかいだった。
このスプリングは鉄製で、径も細いとはいえない。
ラジオペンチ(ロングノーズプライヤー)でスプリングの端を掴んで力を加えていく。
スプリングを伸ばしながら、ケーブルから外していくわけだ。
力はけっこう要るし、時間もかかる。
四箇所外さなければならない。
もうやりたくない、と思った。
でも外した音を聴くと、また同じことをやるだろう。
そう思えるほどの音の変化だった。
音を聴けば、わかる。
スプリングは機械的共振で聴感上のS/N比を悪くしているし、
鉄という磁性体ということでも聴感上のS/N比を、二重に悪くしている。
トーンアームの出力ケーブルに流れる信号の微小ぐあいを考えれば、
この部分に鉄製のスプリングを使うのは論外ともいえる。
濁った音とはどういうものかは、こういう音のことである。
SMEもSeries Vに付属していたケーブルからはスプリングがなくなっていた。