Date: 11月 5th, 2018
Cate: 川崎和男
Tags:

「プロダクトデザインと未来」川崎和男×深澤直人(その2)

昨晩の「プロダクトデザインと未来」川崎和男×深澤直人・対談のあとに、
質疑応答の時間があった。

最初は、主催者特権ということでAXISのスタッフが、
今年のグッドデザイン大賞について、二人に質問された。

今年の大賞は、おてらおやつクラブである。

モノではない。
しかも、AXISのスタッフによると、デザイナーが介在していない、とのこと。
そういうおてらおやつクラブが、2018年度のグッドデザイン大賞に選ばれたことについて、
川崎先生と深澤直人氏にたずねられていた。

AXISのスタッフ、川崎先生、深澤直人氏の話をきいていて、
思い出していたのは、別項「フルトヴェングラーのことば(その1)」で引用したことである。
     *
もう二十年以上も前になりますが、あらゆる世界の国々の全音楽文献をあさって、最も偉大な作品は何かという問合せが音楽会全般に発せられたことがありました。この質問は国際協会(グレミウム)によって丹念に調査されたうえ、回答されました。人々の一致した答えは、──『マタイ受難曲』でもなければ、『第九シンフォニー』でも、『マイスタージンガー』でもなく、オペラ『カルメン』ということに決定されました。こういう結果が出たのも決して偶然ではありません。もう小粋(エレガンス)だとか、「申し分のない出来」とか、たとえば「よくまとまっている」とかいうことが第一級の問題として取り上げられるときは、『カルメン』は例外的な高い地位を要求するに値するからです。しかしそこにはまた我々ドイツ人にとってもっとふさわしい、もっとぴったりする基準もあるはずです。
(新潮文庫・芳賀檀 訳「アントン・ブルックナーについて」より)
     *
「アントン・ブルックナーについて」は1939年だから、20年以上前というと1919年以前。
ほぼ百年前のことだ。

「カルメン」が、最も偉大な作品に選ばれたのと、
グッドデザイン大賞におてらおやつクラブが選ばれたのは、
賞を選ぶにあたっての、共通する何かが、いまも百年前もあるということなのだろうか。

人の身体は新陳代謝が行われていても、老化していく。
昨晩、感じた社会そのものも歳をとっていく、ということも、
新陳代謝が行われていても、老化していっているように思うからだ。

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