大口径フルレンジユニットの音(その7)
フルレンジユニットというのは、バランスである。
一発のユニットで、低音域も高音域も十全にカバーすることはまず無理である。
低音を出そうとして口径を大きくすれば、高域に無理を生じるし、
反対に口径を小さくしていけば、低域に無理が生じる。
ほどほどよい口径(バランス)というのは、
いわゆるロクハン(6インチ半、16cm口径)か20cm口径ということになる。
そういう感覚が当時は強かったから、
30cm口径のフルレンジ、たとえそれがダブルコーンであっても、
ヨーロッパのスピーカーらしい高域の繊細さは、なんだか望めないのではないか、
そんな気がしていた。
あのころ、これらのフルレンジユニットを聴く機会はまったくなかった。
実際に聴く機会があれば、その印象は変ってきただろうが、
ダイヤトーンのP610、フォステクスのFE103は聴く機会はあったのに対し、
ヨーロッパのフルレンジユニットは、実物を見る機会すらなかった。
(その1)にfacebookにコメントがあった。
その方が中高時代に通っていた学校の音楽室には、
グッドマンのAXIOM 301をおさめたスピーカーシステムがあった、とのこと。
AXIOM 301も、30cm口径のダブルコーンのフルレンジユニットである。
なんともうらやましくなる音楽室があったんだな、と思う。
AXIOM 301でクラシック音楽を、中高時代に触れた世代と、
たとえば、1980年代の598のスピーカーが据えつけられていた学校もあったであろう、
そういう音楽室でクラシック音楽にふれた世代とでは、
音楽に対する感性、音に関する感性、響きに関する感性、そして量感に関する感性、
そういったところにずいぶんな違いが生じるのではないのか。