大口径フルレンジユニットの音(その5)
カンターテ・ドミノに関しては、ステレオサウンドにいたころから、
かなりの回数聴いている。
その後も、いろいろな機会に、いろいろな場所で聴いている。
これまでに何回聴いただろうか。
ステレオサウンドにいたときに、同じくらい聴いたのが、
インバルのマーラーの交響曲の四番と五番だった。
でもインバルのマーラーは、その後、聴く機会はまったくなかった。
カンターテ・ドミノはSACDも、CDも、アナログディスクでも聴いている。
これからも聴く機会はあるであろう。
それだけ聴いているのだから、
聴き馴染んだディスクを聴いたあとにカンターテ・ドミノをかければ、
どういう鳴り方をしてくれるのか、ある程度の予測はできる。
なのに今回は、その予測が、いい方向に外れてしまった。
こんなによく鳴るの? と思うほど、いい雰囲気で鳴ってくれた。
SACDでの再生である。
カンターテ・ドミノのディスクにおさめられている情報すべてが音になっている──、
そんな印象ではないものの、必要にして充分の情報が提示されている。
十分ではないのか、といわれそうだが、7月4日に鳴ったカンターテ・ドミノの音は、
充分の方を使いたくなる、そういう鳴り方だった。
いろいろなディスクを聴いて感じる良さは、量感の豊かさにある。
こう書くと、誤解する人がけっこういると思うけれど、
そう表現するしかないよさがある。