オーディオ機器を選ぶということ(購入後という視点・その11)
導入記は、すでにあるオーディオ機器を購入してのものだから、
購入後ではあるけれど、購入時的な導入記もある、ということだ。
何かを、それまでのシステムに導入する。
いったいどれぐらい経ったら、購入時から購入後といえるようになるかは、
はっきりといえることではないし、人によって大きく違ってこよう。
わずか数ヵ月で購入後といえる視点をもつ人もいれば、
半年、一年、もくしはそれ以上の期間を必要とする人いるであろう。
購入時と購入後の視点をはっきりとわけるものは、
小沢コージ氏の文章中にある無意識インプレッションだと思っている。
ステレオサウンド 207号掲載の二本の導入記のうち、
原本薫子氏のそれは、力が入っているのがわかる。
それを腐すつもりは毛頭ない。
力がそうとうに入っているだけに、原本薫子氏の文章はまさに導入記といえる。
いえる、と書いてしまうのがまずければ、私にはそう感じる、といいかえよう。
つまり小沢コージ氏の文章にある
《クルマのハンドリングに関する真の評価は、そのドライバーが無意識的に走っている時にこそ行われるべきで、自分で「走るぞ!」と思っている時のステアリングの手応えや操縦安定性の評価など、あてにならないというのだ》
このことだ。
何も購入時の導入記があてにならない、といおうとしているのではなく、
いわゆる試聴テストではなく、こういう内容の記事であるからこそ、
「走るぞ!」(「聴くぞ!」)という、いわゆる蜜月をすぎたといえるようになってからの、
ようするに無意識インプレッションが、購入後の視点だと考える。