同軸型はトーラスなのか(その25)
テクニクスがリニアフィードバック回路を最初に搭載したアンプは、SE-A5(パワーアンプ)である。
出力段の手前のプリドライバー段からポジティヴフィードバックを、初段にもどしている。
SE-A5の初段は差動回路で、その負荷にカスコード回路とカレントミラー回路を重ねていて、
ポジティヴフィードバックの信号は、初段の負荷のひとつであるカレントミラー回路にかけ、
見かけ上、初段の負荷抵抗が無限大になるようにして、
NFB(ネガティヴフィードバック)をかける前のゲインを、通常のアンプでは比較にならないほどかせげる仕組みだ。
ただこのままでは高域で発振してしまうため、実際の回路では高域でのゲインは落としてある。
NFBは通商のアンプと同じように出力段から初段の差動回路にかけてある。
前に書いたようにPFBとNFBを組み合わせた回路例は過去にもあった。
テクニクスのリニアフィードバックは、テクニクス独自の回路とは言えない面もたしかにあるが、
ここまで積極的にPFBを活用した回路は、おそらくテクニクスが最初だと思う。
つまり、理論としては以前からあった回路を、
テクニクスは独自のテクニックを用いて実現したところに特徴がある。
もうひとつリニアフィードバックの特徴は、
同じくNFBに対してメスを入れたサンスイのスーパー・フィードフォワード・システムにくらべて、
従来の回路にいくつかの部品を追加することで実現可能であるおかげで、普及クラスのアンプにも採用できる。
どうしても回路の規模が大きくなってしまうサンスイのスーパー・フィードフォワード・システムとは、
対照的といってもいい。
サンスイのスーパー・フィードフォワード・システムは、
除算(ネガティヴフィードバック)と減算(フィードフォワード)の組合せ、
テクニクスのリニアフィードバック回路は、
除算と乗算(ポジティヴフィードバック)の組合せ、といえる。