音を聴くということ(グルジェフの言葉・その3)
昭和30年代生れの私には、手塚治虫とともに、石森章太郎の存在もまた大きい。
石ノ森と書くべきなのはわかっているが、
仮面ライダー、キカイダー、サイボーグ009などを読んだ時は、まだ石森だった。
だから、ここでは石森章太郎としておく。
キカイダーの造形は、当時小学生だった私には、衝撃だった。
左右非対称、しかも内部が透けて見える正義のヒーローは、
異形のヒーローを描く石森章太郎の作品の中でも、ひときわ印象に残っている。
そんな小学生だった私は、キカイダーの似顔絵を何度も描いていた。
キカイダーは人造人間という設定で、
ピノキオの話から、キカイダーの物語は始まる。
キカイダーには良心回路(未完成で不完全)が組み込まれている。
物語の最後で、良心回路は完成するのかと思っていたら、
敵によって服従回路を埋めこまれてしまう。
良心回路と服従回路のふたつをもつことで、
人間と同じく善悪の心をもつことになる。
原作のマンガを読んでいた当時は、あまり深く考えなかったが、
良心回路の対極にあるのは悪心回路ではなく、服従回路である。
なぜ石森章太郎は悪心回路にしなかったのか。
その理由は、どこかで語られているのだろうか。
服従回路は、(その1)で書いているグルジェフの言葉を知った後では、
意味深長とでもいおうか、いまごろになって考えさせられる。
別項「続・再生音とは……(続その12に対して……)」で、
AIとは、artificial intelligenceだけではなく、
auto intelligenceなのかもしれない、と書いたのも、服従回路のことを思い出していたからだ。