Noise Control/Noise Designという手法(その40・追補)
(その40)で書いていること、
いわば耳の錯覚といえる現象(音韻修復という)は、1950年に報告されている。
ジョージ・アーミテージ・ミラー(George Armitage Miller)と
ジョゼフ・カール・ロブネット・リックライダー(Joseph Carl Robnett Licklider)による報告が、
もっとも初期のものということだ。
その後さまざまな変形実験へと発展していて、
言語音声から短い時間分だけの情報をごっそり除去して空白をつくる。
それをいくつもつくっていくと、何を言っているのは、まったく理解できない。
なのに空白部分に、元の言語音声とはまったく関連性のないノイズを加えるだけで聴きとれる。
空白によって途切れた情報が補完されたようにつながってきこえてきて、
喋っている内容がわかるようになる。
これは音楽信号に認められていて、
ある音符のひとつを取り除いて、やはり雑音に置換しても、
どの音符が取り除かれたのかわからなくなる、という。
この音楽に関する現象は、佐々木隆之氏が発見されている。
実際は、何らかの情報が欠落していて、そこにあるのはノイズだけだとしても、
前後の音(情報)との関係で、本来であったであろう音が導かれるようにきこえることを、
聴覚誘導と総称されている。
いわば知覚の仕組みである。