Date: 12月 12th, 2017
Cate: オーディオの「美」
Tags:

人工知能が聴く音とは……(その4)

ステレオサウンド 50号(1979年春)、
長島先生の「2016年オーディオの旅」の中に、
フルトヴェングラーのベートーヴェンの第五が、ステレオで再生される話が出てくる。

フルトヴェングラーの録音は、いまのところすべてモノーラルばかりである。
ステレオ録音だ、といわれていたスカラ座とのワーグナーも、
結局はモノーラルだった。
他にもウェーバーの「魔弾の射手」はステレオといわれていたが、
CDを聴くかぎり、そうといえない。

フルトヴェングラーのステレオ録音は残されているのかもしれないし、
まったく存在しないのかもしれない。

ただ市販されているディスクは、疑似ステレオをのぞけば、すべてモノーラルである。
そのフルトヴェングラーの録音が、ステレオだけでなく、最新録音のように聴こえてくる。

「2016年オーディオの旅」は創作だ。
ここに登場する主人公に、フルトヴェングラーのステレオを聴かせてKが説明する。

どのような状況で録音が行なわれたかの調査、
使用された楽器、楽器の配置、ホールの構造、材質などが綿密に調べられ、
録音器材に関しても同じことが行われる。

その調査結果を元にして、録音された信号の変化を割り出す。
そして残されているマスター(モノーラル)から、ステレオの分離が行われる──、
というものだった。

ほんとうにそんな時代が来てほしい、と、読んだ人なら、
クラシック好きの人ならみなそう思ったはずだ。

フルトヴェングラーのベートーヴェンやワーグナー、ブラームスなどが、
ステレオで聴けたなら……。

フルトヴェングラーだけではない、他にも聴きたい演奏家は大勢いる。

現実には2016年は過ぎ去っている。
そんな技術は、いまのところない。

けれど最近の人工知能(AI)による画像処理技術のニュースを見ていると、
もしかして……、と思うことがある。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]