続・再生音とは……(波形再現・その11)
ある個人が、完璧な波形再現を目指してスピーカーの開発に取りかかったとしよう。
波形再現を目指しているのだから、耳で聴いての結果よりも、
まずマイクロフォンを使っての測定、そして波形の比較となる。
個人で無響室をもっている人は、まずいない。
個人の場合、自身のリスニングルームが測定の場となろう。
その時、部屋の音響特性の影響から少しでも逃れるために、
マイクロフォンをスピーカーのごく近くに置く。
1mでも、部屋の影響を無視できるわけではない。
もっと近づけて測定することになろう。
50cmか30cm、それとももっと近く10cmくらいのところにマイクロフォンを立てるかもしれない。
部屋が広ければ、そしてデッドであれば、
マイクロフォンの距離はそこまで近づけなくてもすむだろうが、
部屋が小さくなれば、それだけスピーカーとマイクロフォンの距離は近づく。
そうなってくると、Near Fieldと呼ばれるところにマイクロフォンが来ることだってある。
さすがにVery Near Fieldまでマイクロフォンを近づけることはないと思うが、
それだってまったくない、とはいえない。
Very Near Field、Near Field、Far Fieldの違い、
そこでの音のふるまいを十分に理解したうえで、マイクロフォンを立てての測定なのだろうか。
測定の難しさは、ここにある。
測定をしている本人が測定していると思っている現象ではなく、
違う現象を測定していることだってある。