所有と存在(その15)
盃と酒。
酒に月が映っている。
その「月」を武士が呑む。
そういうシーンを、時代劇で何度か見ている。
盃は、(さかずき)であって(さかづき)ではない。
それでも、そんな時代劇のシーンを見ると、(さかづき)なのかもしれないとふと思う。
月はひとつしかない。
盃の中の酒にある月は、ほんとうの月ではない。
あくまでも映った月であっても、それを呑む。
盃だけでは、そこに月は映らない。
酒という液体があってこそ、月が映り、呑める。
盃は器だ。
オーディオも、その意味で器である。
月は、原音と考えることもできる。
酒は、なんなのか。