スペンドールのBCIIIとアルゲリッチ(書いていて気づいたこと)
(その19)を書こうとしていて、気づいたことがある。
岡先生と瀬川先生のBCIIIの評価というか、
使いこなし(おもにスタンドに関すること)に関係することで、思い出したことがある。
岡先生は長身だ、ということだ。
ステレオサウンドで働くようになって、
岡先生と初めて会った時に、背が高い、と少し驚いた。
瀬川先生と岡先生の身長差はどのぐらいなのだろうか。
ふたりが立って並んでいる写真は、ステレオサウンド 60号に、
小さいけれど載っているとはいえ、身長差を正確に測れるわけではない。
瀬川先生は、熊本のオーディオ店に何度も来られていた。
背が高い、という印象はなかった。
身長差があまりなかったとしても、
椅子に坐る姿勢でも、耳の高さは変ってくる。
前のめりになって聴くのであれば、耳の位置は低くなる。
スピーカーの高さは、床との関係もあるが、
耳との関係も大きい。
昔のオーディオ雑誌には、
マルチウェイのスピーカーシステムであれば、
トゥイーターの位置と耳の位置を合わせた方がいい、と書かれていた。
これがウソだとまではいわないが、
あまり信じない方がいい。
ユニット構成とクロスオーバー周波数との関係で、
バランスのいいポジションは変ってくるし、
たとえば598の3ウェイシステムであれば、
30cmコーン型ウーファーで、スコーカー、トゥイーターがドーム型、
しかもクロスオーバー周波数も各社ともそう大きくは違っていなかった。
専用スタンドがある場合に、それを使い、
用意されていなければ、そのころはいくつかのメーカーからスタンドが発売されていて、
それを使って聴く。
スタンドの高さもそう大きく違うわけではない。
あるレベルまで調整を追い込んだうえで、頭を上下させて音を聴く。
バランスがもっともいいのは、トゥイーターの高さではなく、もっと下にある。
すべての3ウェイ・ブックシェルフ型がそうだというわけではないが、
たいていはウーファーとスコーカーのあいだあたりに耳をもってきたほうがいい。
スピーカーユニットの数が多くなり、縦に配置されていれば、
垂直方向の指向特性は水平方向に比べて、問題が生じやすい。
それもあって耳の高さを変えていくだけで、音のバランスの変化の大きさは、
ユニットの数に比例傾向にある、ともいえる。
スペンドールのBCIIIは4ウェイである。
垂直方向の指向特性はステレオサウンド 44号と46号に載っている。
BCIIの垂直方向の指向特性は45号に載っている。
ふたつのグラフを比較すると、BCIIIは多少問題がある、といえる。
なにしろBCIIIを聴いていないのではっきりいえないが、
耳の高さが変るだけで、音のバランスは変りやすい、はずだ。
瀬川先生は「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
専用スタンドよりも10cmぐらい下げた状態のほうがよかった、といわれている。
岡先生と瀬川先生の身長差、
特に聴いているときの耳の高さの違いは、10cmぐらいだったのかもしれない。
だとすれば、スタンドに関する疑問が解消する。