スペンドールのBCIIIとアルゲリッチ(その1)
私にとってスペンドールの代表的スピーカーといえば、やはりBCIIである。
私だけに限らないはずだ。
少なくとも私と同世代、上の世代のオーディオマニアの人に同じことを聞けば、
九割以上の人がBCIIと答える、と言い切れる。
それほどBCIIの評価は好ましいものだった。
輸入元が今井商事からかわり、復刻されたBCIIの音は聴いていない。
ここでのBCIIとは、あくまでも今井商事が輸入元だったころのBCIIのことである。
BCIIには、BCIIIという上級機があった。
BCIIは3ウェイ、というより2ウェイ・プラス・スーパートゥイーターといえる構成。
BCIIIは、そのBCIIにウーファーをさらに加えたかたちだ。
BCIIのウーファーは口径20cmのベクストレンのコーン型、
BCIIIは、この20cmウーファーに、30cmのベクストレンコーン型を足している。
カタログには、ふたつのウーファーのクロスオーバー周波数は700Hzとなっている。
20cmウーファーは3kHzまで受け持つのは、BCIIもBCIIIも同じである。
この700Hzという値は、もう少し低く設定することは考えなかったのだろうか、と思わせる。
BCIIにも採用されている20cmウーファーをもう下の帯域まで受け持たせていれば、
スピーカーの印象もずいぶん変ってきたはずなのに……。
それはつまりBCIIのイメージそのままに、
スケールアップしたよさをBCIIIは出せたかもしれない、と思うからである。
日本ではBCIIとBCIIIとでは、圧倒的にBCIIのほうが人気が高く、
売行きも大きな差があったはずだ。
BCIIは、よく見かけたし、何度も音を聴いている。
ステレオサウンドの試聴室でも聴いている。
BCIIIは、というと、これも聴きたくても聴く機会がなかったスピーカーのひとつである。
見かけることも、数えるほどもなかった。