プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザイン(その2)
1991年にビクターから、文字通りの超弩級のパワーアンプが登場した。
ME1000である。
出力は200W。重量は83kgである。
ME10000はモノーラルアンプ、83kgという重量は一台あたり、である。
バブル期だったから、これだけのパワーアンプが製品化されたのだろう。
いま、ME1000と同じモノを企画・開発したら、価格はどれだけになるのだろうか。
1991年、ME1000の価格は3,000,000円(ペア)だった。
ME1000とペアとなるコントロールアンプは、ついに出なかった。
おそらく計画はあったはずだ。
バブル期があと数年続いていたら、登場したように思う。
ME1000と同じく、鋳鉄ベース使用の重量級のコントロールアンプだったのかもしれない。
1993年に、ビクターからプリメインアンプAX900(398,000円)が登場した。
ME1000の特徴を引き継ぐモデルである。
ステレオサウンド 109号で、長島先生が新製品紹介記事を書かれている。
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特に圧巻だったのは武満徹のノヴェンバーステップスで、心の中を突き通すようなあの音は、わが国の製品でなければ絶対に出ないような凄みを伴った音だった。何かが国産機の中で芽吹いた、という感慨にも似た心の高ぶりさえ感じたのである。
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ME1000は聴いたことがないが、AX900は聴いている。
私も驚いた。
プリメインアンプの次元とは思えない音が鳴ってきた。
発売後すぐには購入できなかったが、しばらくして自分のモノとして鳴らしていた。
最初はプリメインアンプとして見ていた、
同時にボリュウム付パワーアンプとしても見ていた。
しばらく使っていくうちに、ME1000とペアになるべく開発されていたコントロールアンプが、
バブル崩壊とともに、計画変更されてAX900になったのではないか……、と思うようになった。