「言葉」にとらわれて(Kii THREE・その1)
20代のはじめのころ、
シーメンスのコアキシャルユニットを1.9m×1mの平面バッフルに取り付け、
5.5畳ほどのスペースに押し込んで聴いていた。
そのころから2m×2mの平面バッフルは、憧れであり、目標であった。
いやもう少し前から、そうだった。
ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIESのフルレンジユニットの号で、
2m×2mの平面バッフルでの試聴記事を読んでからだった。
2m×2mの平面バッフルを、ステレオだから二枚というのは、
私のいまの住環境では到底無理である。
昔もそうだった。
だから2m×2mの平面バッフルを、いかにコンパクトにするかを考えてきた。
ただ小型にするだけでは、低音再生能力を考えると、ほとんど意味がない。
2m×2mのサイズと同じだけの能力を維持したまま、
いかに小さくできるか、という意味でのコンパクト化である。
平面バッフルの働きを少し違う視点から捉えれば、
スピーカーユニットの指向特性を単一指向性にするというふうにも考えられる。
そうスピーカーユニットの背面からの音を、なんらかの方法で打ち消せば、
平面バッフルのコンパクトは可能である。
ここまでは考えていた。
けれど実際にどうやって、背面の音だけを打ち消すのかは考えつかなかった。
今日からインターナショナルオーディオショウである。
夕方二時間ちょっとだけ会場にいた。
できるだけ多くのブースを、と思って駆け足でまわっていたら、
あるブースで足が止ってしまった。
ハイエンドのブースだった。