続・再生音とは……(波形再現・その6)
ハイレゾと呼ばれているものは、
いわゆる波形再現の精度を高めていく方向である。
アナログディスク時代、波形再現の精度を高めていく方向は、
ハイコンプライアンス化であった、といえよう。
カートリッジの振動系の軽量化、それに伴う軽針圧化、
針先の形状は丸針から楕円針、さらには超楕円とよばれる形状へ、
トーンアームも軽量化されていった。
その流れのなかで、オルトフォンのSPUやEMTのカートリッジは生きのびていた。
MC型カートリッジのブームが、1970年代の終りに訪れた。
軽量化の中心にあったのは、MM型やMI型であり、
MC型はローコンプライアンス、重針圧に属するモノであった。
SPUの針圧は3gが目安だった。
軽量化を誇っていたカートリッジの針圧は1g台に入っていたし、
1gを切るカートリッジもあらわれていた。
理屈のうえでは、軽量化しやすいMM型、MI型カートリッジのほうが、
音溝の追従性ということでは、重量級のMC型よりも優れている、といっていい。
にも関わらずSPUやEMTのカートリッジは、常に評価されてきたからこそ、
製造中止になることなく、現在に至っている。
MM型、MI型は、いわば電圧発生器である。
MC型は電力発生器である。
電圧なのか電力なのか、この違いは波形再現だけをみていては関係ないことになろうが、
スピーカーから出てくる音を聴くうえでは、無視できないどころか、
大きな違い、本質的な違いでもある。
MM型とMC型の電圧と電力の関係については以前書いているし、
長島先生の「図説・MC型カートリッジの研究」(ステレオサウンド刊)、
その他の方も発言されていることなので、ここではくり返さない。