Date: 8月 27th, 2017
Cate: デザイン
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オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その10)

オーディオに興味をもったときには、アンプのほとんどは半導体アンプだった。
真空管アンプは、ごくわずかだった。いまよりも数としては少なかった。

真空管アンプにはヒーターという灯がある──、
そんなことが当時もいわれていた。

確かに真空管にはヒーターがあって、小さな灯といえる。
けれど真空管アンプのすべてが、ヒーターの灯が見えていたわけではない。

コントロールアンプではまず見えないし、
パワーアンプでも、マランツのModel 9のようにフロントパネルをもつモノは、
まったく見えないわけではないけれど、
マッキントッシュのMC275のような、真空管の灯というイメージとは違ってくる。

それでも、真空管のヒーターの灯が……的なことがいわれていた。
このことは幾分植え付けられた印象なのかもしれないと思いつつ、
ヤマハのA1というプリメインアンプのデザインを、
いまになってあらためて考えることは、
灯をデザインにとり入れるということに目を向けることでもあるように思う。

マッキントッシュのアンプのデザイン、
それはトランジスター化されてからのデザインである。

マッキントッシュの、現在のガラスパネルとイルミネーションを採用したデザインについては、
菅野先生がゴードン・ガウの言葉を借りて、
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」マッキントッシュ号の巻頭で書かれている。
     *
 おれはデザインについてこう思うんだ。デザインは思いつきや感覚だけで出来るものではないと。最も大切なのはリアリティだよ。君がおれのアンプをきれいだと言ってくれるのは大変うれしい。もちろん、きれいじゃなくては困るんだけど、一番必要なことは、絶対に必然性だ。機械としてのね。
 そこで、アンプの場合には何が最も必要かという事になるのだが、アンプは音楽を聴くためのものだ。音楽を聴く場合には、音楽を聴く人のエモーショナル・レスポンス・フォー・ミュージック──音楽に対する情緒的反応──これが生命だと思う。だからアンプは、エモーショナル・レスポンス・フォー・ミュージックというものを持つべきで、これを大切にしなくてはいけない。そのために何が最もふさわしいかなのだが、おれはそれに対し、イルミネーションが最もふさわしいものだと考えたわけだ。
 次に、それならイルミネーションの色はどうすべきか、という問題になる。
 そんな事を考えながら、ある時、飛行機に乗っていて、それが滑走路へおりて行く時に、おれはタクシーウェイのイルミネーションを見た。これだ、これは絶対にすばらしいと思った。しかも、これはだてや酔狂で、ネオンサインのつもりで色をつけているのではないはずだ。そう思うだろう? 相当リサーチされた結果に違いないんだよ。
 実の所、イルミネーションでいこうと決めた時、その色やデザインについて、おれはミシガン大学の研究室に協力をあおいでいたんだ。(ミシガン大学はデトロイトにある関係もあって、すぐれた自動車デザイン部門を持っている)おれは何をやるにも、まず基本的なスタディからはじめないと気がすまない性格だからね……。
     *
イルミネーションが最もふさわしいと考えた理由がなにかはわからないが、
そこに真空管アンプからトランジスターアンプに切り替ったことが、
まったく無関係とは思えないのだ。

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