「商品」としてのオーディオ評論・考(その6)
私が編集部にいた時も、書き直しを頼んだことはある。
けれど、それはメーカー、輸入元に忖度しての書き直しではなく、
でき上ってきた原稿が、あまりにもひどいためである。
時間的に余裕があるときはそういうことができる。
けれど、〆切をすぎて渡された原稿がそうであったときは、
多少は手直ししてもどうにもならないときは、そのまま掲載してしまったこともある。
記事は原稿だけででき上るわけではなく、写真や図も入る。
その説明文は編集者が書く。
そこのところで少しでも、記事としてのクォリティを上げようとする。
一度あったのは、スピーカーのエンクロージュアについて、
ある筆者に依頼した原稿があまりにも酷すぎた。
私の担当ではなかったけれど、担当から「どうにかならないか」と頼まれたので、
写真の説明文において、原稿とは180度違う主張をしたことがあった。
別の編集者が、原稿本文と写真の説明文がまるで違うんですね、ときいていたけれど、
ステレオサウンドが、いままで主張してきたこと、
それにステレオサウンドの読者のレベル、そういったことに対して、
その筆者はまるで認識していなかったから生じたものだった。
それからしばらくその筆者はステレオサウンドには書いていない。
書き直しを依頼したときも、再度上ってきた原稿がたいして変っていなかったこともある。
そのときは、全面的にこちらで書き直した。
そんなことはあったけれど、
くり返すが、メーカー、輸入元に悪い意味での忖度してのそれでは決してなかった。
あくまでも原稿がつまらなかったからである。
けれど現在の忖度は、そうでないことを、
ステレオサウンドの書き手(ひとりではない)から、直接聞いている。