ホーン今昔物語(その7)
アルテックのマンタレーホーンMR94、MR64、
JBLのバイラジアルホーン2360、2365、2366は分割構造になっている。
これだけ奥行きの長いホーンだから分割構造にするのも当然とまず考えるが、
両社の定指向性ホーンに共通する形状からいえるのは、
スロートアダプターとホーンとが分割できる、とみたほうがいい。
JBLのバイラジアルホーンも縦に細長いスリットで音を絞り込んで、
急に広がる開口部のホーンという形状は、マンタレーホーンと共通だ。
ホーン部がアルテックは金属製で直線で構成されているのに対し、
バイラジアルホーンはFRP製で曲線で構成されているために、
マンタレーホーンに感じる、やや平面的な印象はなく、
むしろ光沢のある黒ということもあって、肉感的ともいえる。
スロートアダプターは、アルテック、JBLともに鋳鉄。
2360の音は、どうだったのか。
ステレオサウンド 58号の「ユニット研究」は園田隆史氏が書かれている。
最近のステレオサウンドにも園田隆史氏の名前をときどきみかけるが、
この「ユニット研究」の園田隆史氏とは別人である。
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音の印象は、2350ラジアルホーンのシステムと比べると、構造、材質の差がそのまま音に出たのか、かなりソフトな聴きやすいウォームトーンだった。しかし、柔らかい中にも微妙なニュアンスを十分再現してくれる音で、同じ075を使っていても、他のホーンよりいっそう繊細な高音が聴けた。いままで聴いてきたシステムの音がハード肌とすれば、これはとてもソフトな音で、E145の中低域の張りと2360の厚みがマッチして、ボリュウムたっぷりの中低域だ。
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園田隆史氏の2360の試聴は、別のシステムでも試されている。
ウーファーは同じE145だが、エンクロージュアがこのころ登場したばかりの4508になっている。
バスレフ型で15インチ・ウーファーを二発搭載できる4508エンクロージュアの上に、
2360ホーンの2ウェイシステムは、
4560エンクロージュアとの組合せよりも、視覚的に2360とよくマッチしている。
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4560BKAのシステムの時同様、この組合せでも2360は、高域のレンジこそ広くないものの、ナチュラルな、透明で応答性の高い中高音を聴かせてくれた。ソフトで厚みのある中低域も魅力的だ。ホーンの開口部が大きいので、クロスオーバー(2441との組合せでは500Hzが指定)付近のレスポンスが安定していて、歪が少ないためだろう。また、音像がホーンに集中する傾向があり、ウーファーの帯域の音までが、あたかもホーンから出てくるように聴きとれた。ただし、よく聴き込んでいくと、ホーンの材質(FRP)による固有の振動が音に影響しているようだ。高域が多少不足気味なので、トゥイーターを追加してみたい気もする。
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「ユニット研究」は56号から始まっていて、
前号、前々号だけでなく、58号以降もあわせて読むことで、
2360という新しいホーンの性格は多少なりとも浮び上ってくる。