ホーン今昔物語(その5)
コンプレッションドライバーの開口部の形状は、円。
一方ホーンの開口部は円もあれば四角もある。
円にも楕円があるし、四角にも縦横の寸法比はいろいろある。
つまりホーンの形状は、円から円、円から楕円、円から四角へと変化していく過程である。
アルテックのマンタレーホーンは、少し違う。
ドライバーは従来のものを使うから、その開口部は円。
マンタレーホーンの開口部は、正方形に近い四角形。
ドライバーからホーン奥行きの約半分までは、縦に細長いスリット状になっている。
スリットのあとは急に広がる。
従来のホーンしか見てこなかった目には、理解に苦しむ形状である。
それに当時はマンタレーホーンについての技術的な解説はなかった、といえる。
いまならば”Constant-Directivity Horn”で検索すれば、
英文ではあっても技術資料がすぐに読めるが、当時はそんな時代ではなかった。
ただただ従来のホーンとの形状の違いから想像・判断していた。
ドライバーから出た音を、縦に細長いスリットで絞り込むわけである。
これが、定指向性ホーンの大きな特徴なのであろうが、
当時の私は、ここまで絞り込む必要があるのだろうか、
ここまで絞り込んでいいものだろうか、という疑問もあったけれど、
マンタレーホーンが、従来のホーンでは無理だった音を聴かせてくれたら……、
という心配もしていた。
マンタレーホーンの音が素晴らしかった、としても、
奥行きが90cm近いものは、たとえ購入できたとしても、どうやって設置するのだろうか、
そんな心配もしていた。
マンタレーホーンがステレオサウンドの誌面に登場したのは、
60号特集「サウンド・オブ・アメリカ」だった。
その前に、JBLの定指向性ホーン(バイラジアルホーン)2360が、
58号「スピーカーユニット研究 JBL篇(その3)」に登場している。