日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その9)
アルテックがまだ健在だった時代、
JBLのライバルでもあった時代、
いいかげんに鳴らした場合、JBLはじゃじゃ馬的になることが多々あったのに比べ、
そんな鳴らし方でもアルテックのスピーカーは、聴き手を困惑させるような音を出すことはなかった。
でも、そういう性格のためか、
たまたま私の周りがそうだっただけなのか、
アルテックを真剣に鳴らしている人(ところ)の音には縁がなかった。
不思議と縁はなかった。
けれど喫茶茶会記で音を出すようになってからは、
アルテック(トゥイーターはグッドマンのドーム型の3ウェイ)を、
毎月第一水曜日に鳴らしている。
そうしていれば、アルテックに対する、こちらの意識も少しずつ変化してきたようだ。
5月のaudio wednesdayへ行く前に、タワーレコードに寄った。
最近あまり寄らなくなったフロアー(J-POP、歌謡曲)を見ていた。
グラシェラ・スサーナの新譜が出ているわけではないが、ふと見たら、
ベスト盤が期間限定で通常の約半額で並んでいた。
LP時代のアルバムをそのままCDにしてほしいと思っていても、
発売されるのはベスト盤がほとんどで、そうなると収録曲の大半はダブってくる。
半額になっていたベスト盤は、そんな理由でもっていなかった。
ほんの数曲、初CD化なのだけれど手を出しはしなかった。
でも半額なら……、と買ってしまった。
audio wednesdayでも鳴らすつもりはなかった。
でも、なんとなく、その日はグラシェラ・スサーナがうまく鳴ってくれそうな気がした。
これまでにも日本語の歌の女性ヴォーカルは鳴らしてきている。
松田聖子、荒井由実、竹内まりや、宇多田ヒカルなどは鳴らしていた。
そこでの鳴り方を聴いても、グラシェラ・スサーナを鳴らしたい、
つまりは聴きたいとは思わなかったのに、この日は違った。
違っていたのは聴き手のこちら側の気持ちだけではなく、
アルテックの鳴り方違っていたようだ。
軽い気持だった、うまく鳴らなかったら、途中で鳴らすのをやめようくらいでいたにも関わらず、
鳴ってきた音は、グラシェラ・スサーナの声(「色」)だった。
違和感はまったくなかっただけでなく、
こんなに雰囲気よく日本語の歌を鳴らしてくれるのか、という驚きもあった。
不思議な気持ちになった。
瀬川先生がステレオサウンド 56号に書かれていることを頭のなかで反芻していた。